専門外来について

顎変形症

顎変形症
永久歯の噛み合わせが構成されていく小学校高学年から中学校の期間で何らかの咬合関係の異常がある場合、本人あるいは家族がそれに気付くことがあります。歯の生えている方向や位置の異常が主である場合には、歯列矯正治療が適応となりますが、その歯が並んでいる顎(上顎、下顎)の位置の異常が原因である場合、例えば下顎が前に伸び過ぎていたり、あるいは上顎が小さいなどで上下の歯の噛み合わせが大きくずれてしまっていたり、あるいは顔が左右非対称に歪んでいて、咬み合わせた時に唇のラインが水平でないような場合は『 顎変形症 』と呼ばれる病気である可能性があります。
当科では、そのような患者さんの病状を当科在籍の矯正歯科専門医の診断のもと、外科的顎矯正手術が噛み合わせの改善に有用、もしくは必要と判断した場合に健康保険適応での歯科矯正治療と顎矯正手術をお勧めしています。

『 顎変形症 』にはいくつかの種類があります。
1. 上顎前突症   ・・・ 上の前歯が出ているように見えます。
2. 小上顎症    ・・・ 上顎の成長が不足して、下顎が出ているように見えます。
3. 下顎前突症   ・・・ 下顎が前に出て、オトガイ部も突出していることが多い。
4. 小下顎症    ・・・ 下顎の成長が不足し、噛み合わせが後方で構成されている状態。
5. 開咬      ・・・ 咬み合わせた時に前歯が空き、唇が閉じにくい事が多い。
6. 顎顔面非対称  ・・・ 過成長または劣成長により咬合平面に偏りができた状態。

いずれの状態も放置すると、正常な咬み合わせが獲得できない場合が多く、さらに発音が分かりにくかったり、審美的な悩みを持つことも少なくありません。そこでそれぞれの症例に応じた治療法、手術術式で治療をおこなっています。
 
 
おおまかな治療の流れとしては、矯正歯科専門医の診察で診断を得た後、多くの場合、顎矯正手術前の術前矯正治療に入ります。それが完了後、上記の図に示すような外科的なプランニングがおこなわれます。その計画に則って正確に外科的手術が施行されます。顎矯正手術でおこなわれる術式をいくつか示します。

※このように上顎、下顎または両方の位置を変えることで、理想的な咬合関係を構築できる。
手術術式のシェーマは、KEY WORDS 口腔外科アトラス(医学評論社)より抜粋


当科での治療症例



※下顎が前に出ている噛み合わせを、下顎を手術することで正しい位置に修正しています。




※下顎が右側に偏っている噛み合わせを、まっすぐの位置で咬めるように修正しました。




※咬んだ時に前歯が空いてしまう状態でしたが、上顎と下顎の両方を手術することによって正しい位置で咬めるようになりました。


顎変形症に対する手術時に、その術野となる顎顔面領域には様々な血管、神経、筋肉、腱、唾液腺など重要な臓器が多数存在しています。手術に伴う合併症(傷口の感染、神経損傷、気道閉塞、誤嚥性肺炎、骨接合材の破損など)を回避するために、全身麻酔手術術前検査をして充分な安全対策を取りながらおこないます。術後は骨切りをおこなった顎(骨)の安静を確保するために、顎間固定した状態で手術終了します。顎間固定は約1週間で解除し、開口訓練をおこないながら経過観察し、炎症がおさまれば退院となります。
咬み合わせの異常や不具合、または顎周辺の見た目を気にされている患者さんがおられましたら、ぜひ当科を受診していただきご相談ください。専門科スタッフがお待ちしております。